トップページ | 全エントリー一覧 | RSS購読

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
トラックバック
トラックバック送信先 :
コメント

純粋

ブログに広告も出ちゃったことだし、
前回書いた小説みたいなのも、無言で没ったわけだし、
とりあえずネタというネタもないので、何か書いてみよう。
↓何か


純粋

「美しいものってのは、極めて純粋なんだ」と、ボックはポツリとつぶやいた。薄暗いバーの店内に人は居ない。マスターすら居ない。マスターは買い出しに行くと言って、先ほど店を出て行った。そもそも平日の深夜だ。客は少なくて当たり前だ。バーの中には私とボックしか居なかった。あとは、テーブルの上に、無言で佇む黒ビールだけだった。
「お前が何をいいたいのかわからないな。そもそも、お前の考える『純粋』の定義がわからん?」と、私はボックの突然のつぶやきに反応してみた。
少し目を閉じた後、ボックは答えた。「純粋ってのは、雑念が入っていないことさ。人間がなにかを作り出したり、何かを発言したりするときには、必ず何かしらの『雑念』が入るだろ。例えば、クルスだったら、女の子に話しかける時、すごいエッチなこと考えてるだろ?」
「考えていない」私は即答した。
「今の『考えていない』という発言こそが、雑念なんだ。ノイズなんだよ、そういうの。」と、ボックが黒ビールに視線を向けながら言った。
「どういうことだ?」
「つまりな、エッチな事を考えてる時は、エッチな事を主張して話せばいいんだよ。純粋に、お前はエッチなんだから、エッチな事を隠そうとしながら話すことで、『エッチなことを隠そう』という意志の雑味が入るんだ。さて、わたしは何回『エッチ』って言ったでしょう?」
「知るか・・・」 私は、半分呆れながら言った。ボックの言っている意味がわからなかった。

暫くの間の後、ボックが続けた。
「夕日ってさ、綺麗だよな。」
「あぁ・・・ 綺麗だな」
「夕日の風景を見ている時ってさ、太陽だけを見てるんじゃないんだよ。夕日と、その太陽の下で、立派に生きてきた生命たちの、一日の終りを見ているんだよ。細かい、個々の生活は汚いかもしれない。もしかしたら、堕落した一日だったかもしれない。でも、すべての生命の一日が終わりかけるんだ。ただ、それだけだが、それだけだからこそ、美しいんだと考える」
「ふぅん・・・」私はついていけなくなった。
ただ、こいつが、こういう情緒的なやつで、素直な人間だということは私も認めている。無為に外聞を気にしない。おそらく社会的には成功しないだろうし、成功したいとも思っていないだろうし、本人も成功しないことは自覚しているだろう。
でも、こいつは、そんなわけのわからない「情緒的美しさ」をずっと模索している。ただ、ひたすらに。無意味にだ。今どき、詩人なんてやっても儲からない。でも、それでもこいつは続けている。誰からも評価されること無く。
「誰からも評価されないが、お前は詩をかきつづけてるな」と、私は言った。
「それって、お前が言う『純粋』の、ひとつの例かもしれないな」
ボックは、少しだけ微笑んだあと、
「さぁね・・・、」と、微かな声で言った。

純粋な夜の時間が流れていった。
トラックバック
トラックバック送信先 :
コメント

カテゴリ

つぶやきちゃん

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。