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過去完了(1)

 暑い夏の昼だった。太陽が皮膚を焼くような熱射だった。しかし、私の心は冷たかった。友人が2年前に自殺していた事を知り、彼の実家に向かう途中だった。
 結局、私は彼が死んだ2年後に、やっとその情報を掴んだ程度の仲だった。埼玉と山口では、だいぶ物理的に距離があったかもしれない。お互い、私も彼も、仲良しゴッコが嫌いな人間だったから、メールやネット上での交流などは、一切しなかった。
 汗だくになりながらも、私は不慣れな埼玉の片田舎へやってきた。自殺した彼の実家は、決して裕福とは思えない、古めかしい木造住宅だった。水の溜まった瓶が、無造作に庭に置かれていた。生い茂った樹木は、自由にその生命力を活かし、私の目線を遮った。
 呼び鈴ボタンを押しても、何の手応えもなかった。おそらく、とっくの昔に壊れているのだろう。私は、引き戸をノックした。「ガシャンガシャン」と、今にも崩壊しそうな音がした。引き戸の奥から、人が歩いてくる気配がした。彼の母親だろう。母親は引き戸の向こう側から、
 「斉藤さんですね。どうぞ上がってください」と私に声をかけた。引き戸に鍵はかかっていなかった。刺すような日差しから、室内へ逃げ込んだ。じっとりとした木造の湿った空気が、私の皮膚にまとわりついた。
 仏間に案内された。イグサの香ばしい匂いと、線香の寂しい匂いが漂っていた。
 自殺をした友人の写真と、安物の仏壇が目の前にあった。
 彼とは、3年ぶりの再開だった。

【たぶん続く】
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つぶやきちゃん

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